長年大切に保管していた蔵書や、仕事で使う古い書類の束を整理しようとした際、ページの間や表紙の裏で「白い小さい虫大量発生」を目撃し、背筋が凍るような思いをしたことはありませんか。埃だと思って息を吹きかけると、それらが一斉に、滑るような素早さで四散する。その正体は「本を食べる虫」として古くから知られるチャタテムシ、あるいは衣魚(シミ)の幼体です。特にチャタテムシは体長が一ミリに満たないほど小さく、肉眼では白い点や動く埃のように見えますが、湿度の高い環境を好み、古本の糊(でんぷん糊)や微細なカビを主食として増殖します。私自身、かつて書斎の奥に置いたままにしていた段ボール箱を開けたとき、中の本が白い粉をまぶしたようになっているのを見て、あまりの不気味さに言葉を失った経験があります。大切な知識の財産が、ミクロの破壊者たちによって蝕まれていく光景は耐えがたいものです。この問題を解決し、貴重な資料を守り抜くためには、まず「湿気の遮断」が絶対条件となります。チャタテムシが大量発生している場所は、例外なく湿度が六十パーセントを超えて滞留しています。対策の第一歩は、被害に遭った本をすべて取り出し、天日の当たらない風通しの良い場所で「虫干し」を行うことです。乾燥した空気にさらすだけで、湿気に依存して生きる彼らの多くは死滅します。本棚自体も空にして、アルコール除菌シートで隅々まで拭き上げてください。この際、棚の奥に溜まったホコリは、彼らにとっての最高級の餌となるため、掃除機で完璧に吸い取ることが不可欠です。予防策としては、書棚に本を詰め込みすぎないことが重要です。本と本の間にわずかな隙間を作り、空気が循環するように配置しましょう。また、最近では和紙の成分を用いた防虫シートや、ピレスロイド系の防虫剤を本棚の奥に忍ばせておくのも現代的な防衛術として有効です。特に注意すべきは、通販などで届いた段ボールをそのまま保管箱として使い続けることです。段ボールの多層構造は湿気を吸いやすく、チャタテムシにとってはこの上ない保育所となってしまいます。長期保存する資料は、必ずプラスチック製の密閉コンテナに移し替え、乾燥剤を同梱する習慣をつけてください。古本を愛するということは、その物理的な器を守ることでもあります。白い小さい虫の影に怯えることなく、静寂な読書の時間を取り戻すためには、住まいの空気の質を管理する「知的な清掃習慣」が何よりの武器となります。
古本や書類の隙間で動く白い点々の正体と蔵書を守る術