私は古い家具が大好きで、週末にはよくアンティークショップや古道具店を巡っています。数年前、長年探し求めていた大正時代の美しい文机に出会い、一目惚れして購入しました。自宅に届いたときは、その重厚な佇まいに感動し、書斎の特等席に置いて大切に使っていました。しかし、使い始めて数ヶ月が経ったある朝、文机の脚元に薄茶色の微細な粉がうっすらと積もっているのに気づきました。最初は単なる掃除のし忘れかと思いましたが、拭き取っても翌朝にはまた同じ場所に粉が溜まっています。不審に思って机を裏返してみると、そこには針で突いたような小さな穴が無数に開いていました。驚いてインターネットで調べ、ようやく辿り着いた名前がイエシバンムシでした。この虫の恐ろしいところは、目に見える粉が出てきたときには、すでに木材の内部が幼虫によって食い荒らされているという事実です。私が購入した文机は、表面こそ美しく磨かれていましたが、内部にはイエシバンムシの幼虫が何年も前から住み着いていたのです。幼虫は木の中で数年を過ごし、蛹を経て成虫になるときに表面へ穴を開けて出てくるのだそうです。つまり、私が見つけた粉は幼虫の排泄物であり、小さな穴は成虫が旅立った後の出口だったわけです。ショックで言葉を失いましたが、放置すれば隣に置いてある本棚や住宅の柱にまで被害が広がる可能性があると知り、すぐに専門の駆除業者に相談しました。業者の説明によると、アンティーク家具は製造から時間が経過しているため、木材が適度に乾燥してイエシバンムシ好みの状態になっていることが多いそうです。駆除には専用の薬剤を穴の一つひとつに注入し、さらに全体を燻蒸するなどの処置が必要でした。幸い、早期発見だったため文机を修理して使い続けることができましたが、あのまま気づかずにいたら、いつか机の脚が折れて壊れてしまっていたかもしれません。それ以来、私は中古の家具を購入する際には、必ず裏側や目立たない場所に小さな穴がないか、怪しい粉が落ちていないかを執念深くチェックするようになりました。イエシバンムシは、古いものを愛する者にとって避けては通れない、しかし正しく恐れるべき天敵です。あの静かな書斎で、カチカチという木を噛む音が聞こえていたかもしれないと思うと、今でも背筋が寒くなります。古い家具には物語がありますが、同時に目に見えない住人が潜んでいる可能性も忘れてはいけないと、あの一件は私に深く教えてくれました。
古い家具から出てくる謎の粉とイエシバンムシの正体