ある夏の夜、キッチンの隅を走り抜ける黒い影を目撃した私は、翌日にバルサンを焚くことを決意しました。しかし、我が家はすでに大型の家具や家電が所狭しと並んでおり、家具がある状態で本当に安全に駆除ができるのかという大きな不安がありました。特に心配だったのは、最近新調したばかりの布製ソファと、仕事で使っているデスクトップパソコンです。まずは近所のホームセンターへ走り、養生用の養生シートと大型のゴミ袋を大量に買い込みました。作業を開始してみると、家具がある中での準備は想像以上に体力を使うものでした。食器棚の隙間に薬剤が入らないよう、すべての扉をマスキングテープで塞ぎ、テレビやパソコンは袋を二重に被せて隙間がないか何度も確認しました。ソファについては、薬剤が染み込んで変色するのが怖かったので、ブルーシートで全体を包み込み、床との接地面も徹底的にテープで止めました。家具を動かすのは大変でしたが、壁との間にわずかな通路を作ることで、薬剤が隅々まで行き渡るように工夫しました。準備に二時間ほど費やし、いよいよバルサンを開始。部屋の外へ避難している間、家具の隙間に潜んでいた奴らが一掃される光景を想像しながら、公園で時間を潰しました。規定の三時間が経過し、帰宅してドアを開けた瞬間に感じたのは、独特の薬剤の匂いと、静まり返った室内の空気です。すぐに窓を全開にして換気を行いながら、養生を剥がす作業に取り掛かりました。養生を剥がしてみると、心配していたソファやパソコンには目立った異変はなく、丁寧に養生をした甲斐があったと胸をなでおろしました。驚いたのは、テレビ台の裏側から、これまで見たこともないような大きさのゴキブリの骸が見つかったことです。家具がある部屋だからこそ、こうした死角が奴らの天敵のいない聖域になっていたのだと痛感しました。掃除機を丁寧にかけて、床を水拭きし、養生していた家具の表面を軽く拭き取る作業を終えた頃には、部屋全体が以前よりも研ぎ澄まされたような清潔感に包まれていました。準備は確かに面倒でしたが、家具を運び出す手間を考えれば、適切な養生さえすれば住みながらでも十分にバルサンは活用できるということがわかりました。あの夜の恐怖から解放され、今では家具の隙間を恐れることなく、安心して足を伸ばしてリラックスできています。家具がある環境での駆除を迷っている人がいるなら、丁寧な養生こそが安心を買うための対価であると伝えたいです。