「バルサンを焚いたまま一晩忘れてしまったのですが、その部屋で寝ても大丈夫でしょうか」という相談は、医療現場や毒物相談窓口でも時折見られます。バルサンの主成分であるフェノトリンなどのピレスロイド系殺虫剤は、人間などの哺乳類に対しては比較的毒性が低く、体内で速やかに代謝・排泄されるように設計されています。しかし、放置しすぎの状態になると、本来想定されている濃度や曝露(ばくろ)量を上回る状況が生じるため、慎重な対応が求められます。特に、放置時間が長くなることで問題となるのは「経皮吸収」と「粘膜への刺激」です。長時間密閉された部屋では、家具や寝具に高濃度の薬剤が沈着しています。換気が不十分なまま、その寝具で就寝したり、薬剤が付着したソファーで長時間過ごしたりすると、皮膚を通して成分が吸収され、人によっては湿疹や痒み、ヒリヒリとした痛みを感じることがあります。また、放置しすぎた部屋に残った微細な結晶や粉塵が空気中に舞い戻り、それを吸い込むことで呼吸器の粘膜が刺激され、咳や喉の違和感、喘息のような症状を誘発する恐れもあります。医師のアドバイスとしては、まず放置しすぎてしまった場合は、数時間の徹底的な換気を行った後、特に「顔や手が直接触れる場所」の拭き掃除を完遂するまで、その部屋での就寝や長居は控えるべきだということです。特に乳幼児や高齢者、アレルギー疾患を持つ方がいる家庭では、微量な残留成分にも敏感に反応する可能性があるため、より一層の注意が必要です。もし、入室後に目がチカチカする、喉が痛い、あるいは皮膚に異常が出た場合は、直ちにその場を離れて新鮮な空気を吸い、症状が続くようであれば皮膚科や内科を受診してください。その際、使用したバルサンの製品名や、何時間放置したかという情報を医師に伝えるとスムーズです。放置しすぎは単なる時間のミスではなく、生活空間における化学物質の管理ミスであるという認識を持ち、事後の対策を「過剰すぎるほど」念入りに行うことが、健康を守るための最善の防御策となります。
バルサン放置しすぎによる健康への懸念と医師のアドバイス