都心の築浅マンションに住んで三年、私は自他共に認める潔癖症で、部屋は常にモデルルームのような清潔さを保っていました。ところが、去年の梅雨明け頃、キッチンの床を走り抜ける黒い影を目撃したのです。心臓が止まるかと思いました。その日を境に、二日に一回は必ず「奴」と遭遇するようになり、私の平和な日常は崩壊しました。急にゴキブリが出るようになった原因が分からず、私はノイローゼ寸前まで追い詰められました。毎日三回掃除機をかけ、ゴミ箱は蓋付きの密閉タイプに変え、食べ残しなど一粒も出さないように徹底しましたが、それでも出現は止まりません。ある夜、懐中電灯を持ってキッチンのシンク下を解剖するように調査した際、私は驚愕の事実に気づきました。排水管が床を貫通している部分に、指が入るほどの大きな隙間があったのです。管理会社に相談すると、数ヶ月前に上の階の住人が退去し、その後のハウスクリーニングで潜んでいた個体が配管を伝って移動してきたのではないか、という推測を聞かされました。マンションという巨大な集合体において、自室の清潔さだけでは限界があることを痛感した瞬間でした。私は即座にホームセンターへ走り、隙間を埋めるための専用粘土と、プロ仕様の強力なベイト剤を購入しました。まず、配管周りの穴をこれでもかというほど厚くパテで埋め立て、玄関ドアの郵便受けにも内側から防虫ネットを張りました。さらに、エアコンのドレンホースの先端には防虫キャップを装着。これら「外との繋がり」をすべて物理的に断絶したのです。作業を終えてから一週間、あんなに頻繁に出ていたゴキブリが、嘘のように一匹も現れなくなりました。この経験から学んだのは、急にゴキブリが出るようになった際、自分を責める必要はないということです。原因は建物の構造や周囲の環境にあり、私たちのやるべきことは「犯人探し」ではなく「要塞化」なのです。今では、隙間を一つ塞ぐたびに安心感が積み上がっていくのを感じています。もし今、同じように怯えている人がいるなら、まずはシンクの下を覗いてみてください。そこにある小さな闇を塞ぐことが、あなたに深い眠りを取り戻してくれるはずです。
マンションで急にゴキブリが出るようになった私の奮闘記