秋の気配が深まり、空気が澄み渡る頃になると、我が家のベランダには予期せぬ「侵入者」たちが姿を現します。それこそが、あの強烈な悪臭で知られるカメムシです。田舎暮らしをしているわけでもないのに、なぜか毎年のように私の洗濯物は彼らの格好のターゲットとなり、平穏な午後が悲鳴と絶望に染まることが繰り返されてきました。彼らが洗濯物を好む理由は、その「暖かさ」にあります。越冬場所を探して彷徨うカメムシにとって、日差しを浴びてホカホカに温まった真っ白なバスタオルは、まさに最高級の五つ星ホテルのように感じられるのでしょう。しかも、タオルのパイル地や衣服の折り返し部分は、天敵から身を隠しながら休むのにこれ以上ない構造をしています。ある日、私は取り込んだばかりのズボンを履こうとした瞬間、太もものあたりでカサカサという異音を感じ、パニックに陥りました。中から現れたのは、案の定、刺激を受けて激怒した一匹のカメムシでした。あの、パクチーを何倍にも濃縮したような、一度付いたら三日は取れない強烈な臭い。せっかく丁寧に洗って乾かしたお気に入りの服が、一瞬にしてゴミ同然の存在に変わってしまった絶望感は、経験した者にしか分かりません。それ以来、私はカメムシとの戦いにおいて徹底した「検問体制」を敷くようになりました。まず、洗濯物を取り込む際には、必ず外で一枚ずつ大きく振り、さらにポケットの内側やフードの裏、ボタンの隙間までを執拗なほどに目視で確認します。それでも彼らは巧妙に隠れていることがあるため、最近ではベランダの柵全体にカメムシ専用の忌避剤を塗布し、さらにハッカ油のスプレーを空中に撒き散らすことが取り込み前の儀式となっています。驚いたのは、彼らが「白」だけでなく「明るい緑」にも強く反応することです。新調したライムグリーンのスポーツウェアがカメムシのたまり場になったのを見て以来、干す順番や配置にも戦略が必要だと悟りました。カメムシとの戦いは、忍耐と観察力の戦いです。彼らは決して悪意を持って私を襲っているわけではありませんが、私の清潔な生活圏を脅かす存在である以上、妥協は許されません。秋の美しい夕暮れ時、虫一匹入れずに完璧に洗濯物を取り込み終えた瞬間の解放感。それは、自然の猛威から自らの城を守り抜いた戦士のような高揚感さえ伴います。今では、カメムシの羽音を遠くに聞き分ける能力さえ身につけた気がしますが、それでもなお、毎日の取り込み作業には一分の隙も許さない覚悟で挑んでいます。