家のキッチンや洗面所、浴室といった水回りでねずみの糞を発見した場合、特に警戒すべき病気が「レプトスピラ症」です。この病気は、主に病原体であるレプトスピラ菌に汚染されたねずみの尿によって媒介されます。糞がある場所には、目に見えない尿も排出されていると考えるのが自然であり、水を使う場所での糞の発見は、この病気のリスクが格段に高まっているサインと言えます。レプトスピラ菌は湿った環境を好み、水中でも長期間生存することができます。感染経路は、菌に汚染された水や土壌が、私たちの皮膚にある小さな傷口や、目・鼻・口といった粘膜に接触することです。例えば、ねずみの尿で汚染されたキッチンのシンクで食器を洗ったり、床を素足で歩いたり、あるいは汚染された水が跳ねて目に入ったりすることで感染する可能性があります。症状は非常に多様で、初期は発熱や頭痛、筋肉痛といった風邪に似た症状から始まります。そのため、ただの風邪だと見過ごされがちですが、これがレプトスピラ症の恐ろしいところです。重症化すると、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、出血傾向、そして急性の腎不全などを特徴とする「ワイル病」と呼ばれる状態に移行することがあり、命に関わる危険な状態に陥ります。特に、農作業や下水道工事、川でのレジャーなど、汚染された水や土に触れる機会の多い人が感染しやすいとされていますが、家庭内でも、ねずみが侵入し、水回りを汚染すれば、誰にでも感染のリスクは生じます。水回りは私たちの生活に不可欠な場所であり、そこで使う水が病原体に汚染されているかもしれないという事実は、大きな脅威です。水回りでねずみの糞を見つけた際は、糞だけでなく、その周辺一帯が尿によって汚染されている可能性を常に念頭に置き、徹底した清掃と消毒を行うことが、この見えざる敵から身を守るために不可欠なのです。