家の中で大きな蜘蛛に遭遇し、毒蜘蛛ではないかと肝を冷やした経験を持つ方は少なくないでしょう。しかし、家の中で見かける蜘蛛のほとんどは、人間にとって無害であるか、むしろ有益な存在、いわゆる「益虫」です。特に、しばしば毒蜘蛛と間違えられてしまうのが「アシダカグモ」です。彼らの特徴を理解し、危険な毒蜘蛛との違いを知ることで、無用な恐怖から解放されましょう。アシダカグモは、脚を広げるとCD一枚分ほどの大きさにもなる、日本最大級の徘徊性の蜘蛛です。その巨大さと素早い動きから、多くの人を恐怖に陥れますが、彼らは人間に対して全くと言っていいほど攻撃性がありません。非常に臆病な性格で、人の気配を感じるとすぐに物陰に隠れてしまいます。彼らが家に住み着く理由はただ一つ、そこに豊富な餌があるからです。そして、その主食こそが、私たち人間にとって最も不快な害虫であるゴキブリなのです。アシダカグモは、一晩で数匹、多い時には十数匹ものゴキブリを捕食すると言われています。彼らが家にいるということは、それだけゴキブリの発生を抑制してくれている証拠であり、まさに「家の守り神」とも呼べる存在なのです。では、この益虫と、危険な毒蜘蛛であるセアカゴケグモとは、どのように見分ければよいのでしょうか。まず、見た目が全く異なります。アシダカグモは全体的に褐色で、まだら模様があり、平べったい体型をしています。一方、セアカゴケグモは黒光りする丸い体で、腹部に鮮やかな赤い模様があります。また、行動様式も対照的です。アシダカグモは巣を張らずに家の中を歩き回って獲物を探しますが、セアカゴケグモは特定の場所に不規則な巣を張って、獲物がかかるのを待ち構えます。もし、家の中で巨大な蜘蛛が壁を走り抜けていったら、それはおそらくゴキブリを追いかけているアシダカグモです。パニックにならず、そっと見守ってあげましょう。彼らを殺してしまうことは、家のゴキブリ駆除担当者を一人失うことと同じなのですから。