どんなに注意していても、毒蜘蛛に咬まれてしまう可能性はゼロではありません。万が一、セアカゴケグモやカバキコマチグモなどの毒蜘蛛に咬まれてしまった場合、パニックにならずに冷静に応急処置を行うことが、症状の悪化を防ぐ上で非常に重要です。ここでは、咬まれた直後に行うべき正しい対処法を解説します。まず、最も大切なことは、咬まれた蜘蛛の種類がわかる場合は、その特徴を覚えておくか、可能であれば安全な方法で捕獲するか、スマートフォンなどで写真を撮っておくことです。後の診察の際に、医師が適切な治療方針を立てるための極めて重要な情報となります。ただし、無理に捕まえようとして再度咬まれる危険は絶対に避けてください。次に、傷口の処置を行います。すぐに、水道水や石鹸水で傷口とその周りを優しく、しかし念入りに洗い流します。これは、傷口に付着した毒を少しでも洗い流し、また、牙によってできた傷口からの細菌感染(二次感染)を防ぐためです。この時、傷口を無理に絞り出したり、口で吸い出したりするのはやめましょう。毒が体内に広がるのを早めたり、口の中に傷があるとそこから毒が入ったりする危険性があります。傷口を清潔にした後は、患部を冷やすことで痛みを和らげ、毒の吸収を遅らせる効果が期待できます。氷をビニール袋に入れ、タオルで包んだものを患部に当てましょう。痛みや腫れがひどい場合は、患部を心臓より高い位置に保つと、症状が楽になることがあります。応急処置を施したら、できるだけ早く医療機関を受診してください。特に、咬まれたのが子供や高齢者であったり、アレルギー体質であったりする場合は、重症化するリスクが高いため、迷わず救急車を呼ぶことも検討してください。受診する際は、皮膚科や外科が適切ですが、緊急の場合は救急外来でも構いません。咬まれた後の症状は、時間と共に変化することがあります。最初は軽い痛みでも、数時間後に激しい痛みや全身症状(発熱、吐き気、頭痛、筋肉の痙攣など)が現れることもあります。自己判断で様子を見るのではなく、専門家である医師の診断を仰ぐことが、最も安全で確実な対処法です。