代表的な便所虫その1チョウバエの生態と駆除法
現代の住宅において、「便所虫」という言葉で最も頻繁に指されるのが「チョウバエ」です。体長は数ミリ程度と小さく、全体的に黒っぽく毛むくじゃらで、静止している時に翅を広げた姿が逆ハート型に見えるのが最大の特徴です。一見すると小さな蛾のようにも見えますが、ハエの仲間です。彼らは飛ぶ力があまり強くなく、壁や天井にピタッと張り付いていることがほとんどで、その動きは非常に鈍重です。このチョウ-バエは、一体どこからやってくるのでしょうか。その発生源は、私たちの生活空間に必ず存在する「汚泥(ヘドロ)」です。トイレや浴室、キッチンの排水管の内部、浄化槽などに溜まった、髪の毛や皮脂、石鹸カスなどが混じり合ってできたヌルヌルの汚泥は、チョウバエの幼虫にとって最高の餌場であり、安全な住処となります。成虫が排水口の隙間などから配管内に入り込み、汚泥に卵を産み付け、そこで孵化した幼虫(オナガウジ)が汚泥を食べて成長し、やがて蛹を経て成虫となり、排水口から這い出してくるのです。彼らは人を刺したり咬んだりすることはありませんが、不衛生な汚泥から発生するため、大腸菌などの病原菌を体に付着させて運んでいる可能性があり、衛生害虫として扱われます。チョウバエを根絶するためには、飛んでいる成虫を殺虫剤で駆除するだけでは不十分です。最も重要なのは、発生源である排水口内部の汚泥を徹底的に除去することです。柄の長いブラシで物理的にこすり落とす、市販のパイプクリーナーを定期的に使用する、そして仕上げに六十度程度のお湯を流して残った卵や幼虫を死滅させる、といった対策が非常に有効です。発生源を断つことこそが、チョウバエとの戦いに終止符を打つ唯一の方法なのです。