日本で注意すべき毒蜘蛛としてセアカゴケグモやカバキコマチグモが挙げられますが、世界に目を向けると、その危険度をはるかに凌駕する、まさに「猛毒」と呼ぶにふさわしい蜘蛛たちが存在します。世界の恐ろしい毒蜘蛛を知ることは、日本の蜘蛛に対する正しい危機管理意識を持つ上で、そして日本の環境が比較的安全であることを再認識する上で、有益な知識となるでしょう。世界で最も危険な毒蜘蛛の一種としてしばしば名前が挙がるのが、オーストラリアに生息する「シドニージョウゴグモ」です。この蜘蛛は非常に攻撃的で、強力な神経毒を持っています。咬まれると、わずか数十分で死に至ることもあるほど危険で、特に男性に対して毒の効果が強く現れるという特徴があります。その牙は非常に大きく、人の爪さえも貫通すると言われています。また、南北アメリカ大陸に広く分布する「クロドクシボグモ(ブラックウィドウ)」も有名です。日本のセアカゴケグモの近縁種にあたりますが、その毒はセアカゴケグモよりも強力な神経毒で、咬まれると激しい筋肉の痙攣や呼吸困難を引き起こします。その名の通り、光沢のある黒い体に、腹部には赤い砂時計模様があり、まさに死の象徴のような姿をしています。さらに、南米に生息する「ブラジリアン・ワンダリング・スパイダー(クロドクシボグモ)」は、世界で最も毒性が強い蜘蛛としてギネスブックにも認定されています。徘徊性の蜘蛛で非常に攻撃的、強力な神経毒は人間にとっても致命的です。このように、世界には咬まれれば命に関わるような猛毒蜘蛛が数多く存在します。それに比べると、日本のセアカゴケグモやカバキコマチグモの毒は、重篤な症状を引き起こすことはあるものの、適切な治療を受ければ死亡することは極めて稀です。もちろん、日本の毒蜘蛛を軽視して良いわけでは決してありません。しかし、世界の現状を知ることで、私たちは過剰なパニックに陥ることなく、冷静に、しかし確実に、日本の環境に合わせた適切な予防と対策を講じることができるようになるでしょう。
世界の猛毒蜘蛛と日本の安全度