日本に生息する数多くの蜘蛛の中で、私たちの健康に影響を及ぼすほどの強い毒を持つものは、実はごく一部に限られています。しかし、万が一の事態を避けるためには、それらの危険な毒蜘蛛の特徴を知り、正しく見分ける知識を持つことが非常に重要です。ここでは、特に注意すべき日本の代表的な毒蜘蛛の見分け方を解説します。まず、最も警戒が必要なのが「セアカゴケグモ」とその仲間です。この蜘蛛は、光沢のある黒い体色が特徴で、メスの腹部の背面には、まるで砂時計を逆さにしたような、鮮やかな赤色の縦縞模様があります。この非常に目立つ模様が、セアカゴケグモを識別する最大のポイントです。体長はメスで約一センチ程度。オスははるかに小さく、毒も弱いため、危険なのは主にメスです。側溝の蓋の裏や、植木鉢の下、自動販売機の裏、公園のベンチの下など、日当たりが良く、地面に近い人工的な構造物の隙間に、不規則な形の巣を作って潜んでいます。次いで注意したいのが「カバキコマチグモ」です。この蜘蛛は、体長が一センチから一・五センチほどで、全体的に淡い黄緑色や薄茶色をしているのが特徴です。特に攻撃的になるのは、夏から秋にかけての繁殖期で、ススキやアシなどのイネ科の植物の葉を巻いて、袋状の巣を作ります。草刈りや農作業中に、この巣を誤って壊してしまうと、中から飛び出してきたメスに咬まれる被害が発生します。他の蜘蛛と比べてずんぐりとした体型をしており、腹部が大きく、脚は比較的短めです。最後に、近年確認例が増えている「ハイイロゴケグモ」も要注意です。セアカゴケグモの近縁種で、体型は似ていますが、体色は灰色や褐色で、腹部には不明瞭な斑点模様があります。セアカゴケグモほど特徴的な模様はありませんが、ゴケグモ属特有の丸々とした腹部と、不規則な網の巣で見分けることができます。これらの特徴を覚えておき、似たような蜘蛛を見かけた場合は、決して素手で触ったり、刺激したりせず、静かにその場を離れることが賢明な判断です。
日本にいる危険な毒蜘蛛の見分け方