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蟻の巣ごと全滅させる効果的な駆除方法
目の前を行進するアリの行列を、殺虫スプレーで駆除しても、それは一時しのぎに過ぎません。数時間後、あるいは翌日には、また新たな兵隊たちが、同じ場所に列をなしていることでしょう。アリとの戦いに、本当の意味で終止符を打つためには、その供給源である「巣」そのものを、女王アリごと全滅させる必要があります。巣を根絶やしにするための、最も効果的な戦略が、「ベイト剤(毒餌)」の使用です。ベイト剤は、アリが好む餌に、遅効性の殺虫成分を混ぜ込んだものです。この「遅効性」というのが、最大のポイントです。働きアリは、ベイト剤を本物の餌だと思い込み、せっせと巣へと持ち帰ります。そして、巣の中にいる仲間たちや、女王アリ、そして幼虫に、その毒餌を分け与えるのです。毒は、すぐには効果を現しません。数日かけて、ゆっくりと巣全体に広まっていき、何も知らないアリたちが、自らの手で、自分たちの王国を内側から崩壊させていくのです。このドミノ効果により、直接ベイト剤を食べていない、巣の奥深くにいる女王アリや、次世代を担う幼虫まで、一網打尽にすることが可能となります。市販のベイト剤には、プラスチックの容器に入った「設置型」と、液体やジェル状の「直接塗布型」があります。設置型は、アリの行列の途中や、巣の入り口近くに置くだけで手軽に使えます。直接塗布型は、壁のひび割れなど、アリが出入りしている隙間に直接注入することができ、よりピンポイントでの効果が期待できます。ベイト剤を使用する際は、一つ注意点があります。それは、ベイト剤を設置している間は、その周辺で殺虫スプレーなどを使わないことです。スプレーの忌避効果で、アリがベイト剤に寄り付かなくなってしまっては、元も子もありません。アリが行列を作って毒餌を運んでいく姿は、少し不気味に見えるかもしれませんが、それは、作戦が成功している証拠です。静かに、そして確実に行われる殲滅作戦を、辛抱強く見守りましょう。
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ある日突然、キッチンが蟻に占拠された話
その悪夢は、ある夏の朝、突然始まりました。私が朝食の準備をしようと、キッチンの電気をつけた、その瞬間。目の前の光景に、私は言葉を失いました。砂糖を入れていたキャニスターの周りに、黒い点が、まるで生きている絨毯のように、うごめいていたのです。それは、何千、何万という、小さなアリの大群でした。そして、その黒い絨毯は、一本の太い線となって、窓のサッシの、ほんのわずかな隙間へと、脈打つように繋がっていました。私は、悲鳴を上げることもできず、ただ呆然と、その異様な光景を眺めていました。前日の夜、私がクッキーを焼いた際に、こぼしてしまった一握りの砂糖。おそらく、それを発見した一匹の偵察アリが、仲間たちに知らせ、一晩のうちに、この大軍団を組織したのでしょう。私は、半狂乱になりながら、掃除機でその黒い行列を吸い込み始めました。しかし、吸っても吸っても、窓の隙間からは、次から次へと、新たな兵士たちが湧き出てきます。まるで、無限に続く悪夢のようでした。その日、私は一日中、蟻との戦いに明け暮れました。殺虫スプレーを買いに走り、行列の元となっている窓の隙間に、狂ったように噴射しました。そして、家中を徹底的に掃除し、食べ物はすべて冷蔵庫か密閉容器へと避難させました。数日後、ようやく蟻の姿は見えなくなりましたが、私の心には、深いトラウマが刻み込まれました。あの黒い絨毯の光景は、今でも時々、夢に出てきます。この経験から学んだのは、アリの嗅覚と、情報伝達能力の恐ろしさです。そして、たった少しの油断、たった一握りの砂糖が、いかに簡単に、家の平和を崩壊させてしまうか、ということでした。それ以来、我が家のキッチンに、蓋の開いた砂糖の容器が置かれることは、二度とありません。