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草原に潜むカバキコマチグモの脅威
セアカゴケグモが外来種の毒蜘蛛として広く知られている一方で、日本在来の蜘蛛の中にも、非常に強い毒を持つものが存在します。その代表格が「カバキコマチグモ」です。この蜘蛛は、日本に生息する蜘蛛の中で最も毒性が強いとされており、咬まれた際の痛みは非常に激しいことで知られています。カバキコマチグモの見分け方と、その危険性について詳しく見ていきましょう。カバキコマチグモは、体長が一センチから一・五センチほどの中型の蜘蛛で、全体的に半透明感のある美しい黄緑色や麦わら色をしています。頭胸部はやや赤みがかっており、大きく鋭い牙が目立ちます。他の蜘蛛に比べて腹部が大きく、脚はがっしりとしています。彼らが主に生息するのは、ススキやチガヤ、アシなどが生い茂る草原や河川敷、水田などです。普段は草の間を徘徊して獲物を探していますが、特に注意が必要なのが、七月から九月にかけての繁殖期です。この時期、メスはイネ科植物の葉の先端部分を数枚束ねて、糸で巧みに巻き上げ、内部に卵を産み付けるための「ちまき」のような形の巣を作ります。そして、メスはこの巣の中に留まり、卵と孵化した子供たちが成長するまで、外敵から守り続けます。この時のメスは非常に攻撃的になっており、巣に危険が迫ると感じると、躊躇なく飛び出してきて、鋭い牙で咬みついてきます。草刈りや農作業、あるいは子供が草原で遊んでいる際に、この巣を誤って刺激してしまうことで、咬傷被害が発生するケースがほとんどです。カバキコマチグモに咬まれると、針で刺されたような激しい痛みが走り、患部は赤く腫れ上がります。痛みは数時間から数日にわたって続くことがあり、重症化すると、発熱や吐き気、頭痛などの全身症状を伴うこともあります。草原や河川敷で活動する際は、長袖、長ズボン、手袋を着用し、むやみに草むらに手を入れたり、茂みをかき分けたりしないようにすることが、この危険な在来種から身を守るための重要なポイントです。